大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

名古屋高等裁判所金沢支部 昭和43年(ネ)59号 判決

主文

原判決中控訴人らの部分を取消す。

被控訴人の控訴人らに対する請求をいずれも棄却する。

訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は、「主文同旨」の判決を求め、被控訴代理人は、「本件控訴を棄却する。」との判決を求めた。

当事者双方の事実上の陳述及び証拠関係は、左記に附加する外は、原判決の事実摘示のとおりであるから、ここにこれを引用する。

控訴代理人において、本件約束手形について、控訴会社が、昭和四二年七月二五日、福井簡易裁判所になしたる除権判決の申立に対し、同裁判所において、昭和四三年三月一五日除権判決がなされ、該判決は確定した。

よつて、控訴人らは、被控訴人に対し、本件約束手形金を支払う義務がない。

と述べ、

被控訴代理人において、本件約束手形について、控訴人ら主張の日時に除権判決がなされ、該判決が確定したことは認める。

しかしながら、被控訴人は、右除権判決の言渡前である昭和四三年二月六日、既に、本件約束手形金について、実質的請求権を行使し、本訴を提起したものであるから、これにより本件約束手形金について権利拘束が発生した。

しかして、右除権判決は、公示催告期間内に権利の届出ないし約束手形の提出がなかつたことを理由になされたものであるが、右の如き形式上の判決をもつてしては既に権利拘束の発生した本件被控訴人の実質上の請求権行使に対し何らの効力も及ぼさない。

と述べた。

立証(省略)

理由

本件約束手形について、昭和四三年三月一五日、福井簡易裁判所において、除権判決の言渡がなされ、該判決が確定したことは当事者間に争いがない。

右事実によれば、本件約束手形は、右除権判決によつて、その確定と同時に無効に帰したものというべきである。

とすると、仮令、被控訴人が、その主張の如く、右除権判決の言渡前に、本訴を提起したとしても、右除権判決の確定後である本件口頭弁論の終結時においては、被控訴人をもつて本件約束手形の所持人とは認め難いので、本件約束手形の所持人であることを前提とする被控訴人の控訴人らに対する本訴請求は、その前提において失当であるから、爾余の点について判断するまでもなく、失当として、これを棄却すべきである。

よつて、右と趣旨を異にする原判決中の控訴人らに関する部分は失当であるから、これを取消し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九六条、第八九条を適用して主文のとおり判決する。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例